法律コラム

下請法

2024年7月4日

1 下請法(下請代金支払遅延等防止法)とは

下請法は、下請代金の遅延等を防止することにより、親事業者と下請事業者との取引を公正にし、下請事業者の利益を保護するための法律です。

下請になる場合に下請法違反の主張が考えられます。
親事業者になる場合には、取引において、下請法を意識することが必要です。違反すると立入検査、公表、罰金のリスクがあります。

2 下請法が適用される取引

(1) 下請法が適用される取引は、事業者の資本金の規模と、取引内容によって決まります。

(2)資本金区分(第2条第7項、第8項)

① 物品の製造・修理委託。その他、下請法施行令第1条で定める情報成果物作成委託、役務提供委託として、プログラム作成委託、運送、物品の倉庫における保管、情報処理委託

親事業者 下請事業者
資本金3億円超 ⇒ 資本金3億円以下(個人含む)
資本金1千万円超3億円以下 ⇒ 資本金1千万円以下(個人含む)

② 情報成果物作成・役務提供委託(①を除く)

親事業者 下請事業者
資本金 5千万円超 ⇒ 資本金5千万円以下(個人含む)
資本金1千万円超5千万円以下 ⇒ 資本金1千万円以下(個人含む)

3 親事業者の義務

① 下請事業者の給付内容、下請代金の額、支払期日、支払方法等の書面交付義務(第3条)
② 下請事業者の給付、給付の受領、下請代金の支払等についての書類の作成、保存義務(第5条)
③ 給付受領から60日の期間内で、できる限り短い期間内において、下請代金の支払期日を定める義務(第2条の2)
④ 下請代金を、支払期日までに支払わなかった場合には、給付受領日から60日を経過した日から支払をするまで年14.6%の遅延利息を支払う義務(第4条の2)

4 親事業者の禁止行為(第4条)

下請法第4条では、親事業者に次の行為を禁止しています。

① 受領拒否

注文した商品の受領を拒絶すること(1項1号)

② 下請代金の支払い遅延

下請代金を支払期日が経過しても支払わないこと(1項2号)

③ 下請代金の減額

下請事業者に落ち度がないもかかわらず、下請代金の減額をさせること(1項3号)

④ 返品

下請事業者に落ち度がないもかかわらず、返品すること(1項4号)

⑤ 買いたたき

下請代金の額を相場より著しく低い額とすること(1項5号)

⑥ 購入・利用強制

正当な理由がある場合等を除いて自己の指定する物を強制購入させ、役務を強制して利用させること(1項6号)

⑦ 報復措置

下請法違反の事実を公正取引委員会等に知らせたことを理由として、不利益な取扱いをすること(1項7号)

⑧ 有償支給原材料等の対価の早期決済

有償で支給した原材料等の対価を、当該原材料等を用いる給付に対する下請代金の支払期日より早い支払期日の下請代金と相殺したり、先に支払わせたりすること(2項1号)

⑨ 割引困難な手形の交付

一般の金融機関で割引を受けることが困難な手形を交付すること(2項2号)

⑩ 不当な経済上の利益の提供要請

下請事業者から金銭、労務の提供等をさせること(2項3号)

⑪ 不当な給付内容の変更、不当なやり直し

下請事業者に落ち度がないにもかかわらず、給付内容を変更させ、給付の受領後に給付をやり直させること

5 下請代金法適用対象外の行為

 下請法適用対象外の取引であっても、以下の規制があります。

① 建設業法

建築業における下請については、建設業法で、書面による契約締結義務等、下請代金の支払時期等について規制がされています。

② 独禁法の不公正な取引方法(優越的地位の濫用)

取引上優越的地位にある事業者が、取引先に対して不当に不利益を与える行為は、独占禁止法2条9項5号、同法19条で禁止されています。

③ 物流特殊指定

物品の運送、保管を委託する取引のうち、荷主と物流事業者との取引については、物流特殊指定が適用され、物流特殊指定では、代金の支払遅延禁止、代金の不当な減額の禁止等が規定されています。物流事業者間の再委託取引については下請法が適用されます。

④ 大規模小売業の特殊指定

「大規模小売業者」による「納入業者」に対する優越的地位の濫用行為を効果的に規制するため、大規模小売業の特殊指定では、不当な返品、不当な値引き、特売商品等の買いたたき等を禁止しています。